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井沢 元彦

逆説の日本史2 古代怨霊編(小学館文庫): 聖徳太子の称号の謎 (小学館文庫 R い- 1-2) 文庫 – 1998/3/1
歴史解釈の主流ではないと理解しながらも、読み物としては非常に面白い。やっぱり小説家は違うかな。
作者が追及し続ける、歴史学者の「呪術・宗教的側面の軽視」「現存文献偏重」は確かにそうかなと思う部分もあります。しかし、歴史探求には難しい面もあります。呪術・宗教的側面とはまさに内心のことで現代においても個人の内心を推し量ることは困難で、法廷裁判でも問題となるところです。それなのに1500年前の聖徳太子や推古天皇の思惑や意図を正確に把握することは極めて困難といえます。それを推測する材料として現存文献を尊重することは一般的に言えば科学的な立場で尊重すべき点でもあります。一方で歴史が事実以外は推測するしかないということにおいて、極めて非科学的で一般的な科学の姿勢とは違うことは否めません。そこが歴史の面白いところです。作者のように一般論と違う論を展開しても明確に反論を証明できません。
一方で諡号についての考察は合理的だと思いました。何等かの非業の死を遂げたものだけが「徳」の諡号を送られるという事実は聖徳太子の一生を推察するうえで重要な要素だと思いました。
歴史は非科学的な部分も含めて、「罪のない考察」だと思います。そこが私の性分に合っているのかもしれません。
逆説の日本史2 古代怨霊編(小学館文庫): 聖徳太子の称号の謎 (小学館文庫 R い- 1-2) 文庫 – 1998/3/1
説明
目次
第一章 聖徳太子編-「徳」の諡号と怨霊信仰のメカニズム
西洋合理主義史観が見落とした「聖徳」の称号/なぜ
「聖徳」な皇太子は天皇になれなかったのか/隋の「暴
君」を怒らせた〝外交センス〟/『隋書倭国伝』に記さ
れた天皇家の〝性〟/史上初の女帝出現と聖徳太子の
「天皇暗殺」疑惑/「ノイローゼ」から救った温泉療法
と仏の教え/〝死の儀式〟に封じ込められた「不可解な
死」/「殯」の儀式にみる古代人の死生観 ほか
第二章 天智天皇編
-暗殺説を裏付ける朝鮮半島への軍事介入
古代日本史上最大の軍事介入「百済救援」の背景/『日
本書紀』から四百年後に暴かれた「天皇暗殺」説の根拠
/『日本書紀』に「天智陵」の所在が記されていない謎
/『万葉集』に折り込まれた「天皇暗殺」の真相/「天
智」と「天武」は本当に兄弟なのか/天武一族が「正当
化」した壬申の乱と皇位継承/仏式・神式の祭祀から除
外された「天武系」の天皇 ほか
第三章 天武天皇と持統女帝編
-天皇家の血統と『日本書紀』の〝作為〟
『日本書紀』は天武天皇の正体を隠すために編纂された
!?/孫を皇位につけて〝万世一系〟を死守した「持統
女帝の真意/「天智王朝」復活と「天孫降臨」神話の奇
妙な符号/持統王朝と〝連立政権〟を組んだ藤原不比等
の大いなる野望
第四章 平城京と奈良の大仏編
-聖武天皇の後継者問題と大仏建立
「世界最大」の金剛仏を建立した聖武天皇の〝不可解な
行動〟/聖武天皇の後継者問題と藤原四兄弟の〝大陰
謀〟/〝無実の罪〟を後世に伝えた「太政大臣長屋
親王」の肩書/「国家鎮護」の建前で「怨霊封じ」
を行った光明皇后の〝恐怖〟 ほか
井沢 元彦
昭和29年、名古屋市生まれ。早大法学部卒。TBS入社後、報道局放送記者時代『猿丸幻視行』で第26回江戸川乱歩賞受賞。その後退社し執筆活動に専念。歴史推理・ノンフィクションに独自の世界を開拓