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橘 玲

世界はなぜ地獄になるのか (小学館新書) 新書 – 2023/8/1
社会正義の複面性、自分らしく生きることの衝突、SNSによるキャンセルカルチャー。考えることの多い本だと思います。
よく言われるSNSの普及による、だれでも発信できる社会に現代は突入しています。オジーさんは承認欲求が低く、さりげなく、自分らしく生きているつもりです。自分が若いころを鑑みるとそれなりに承認欲求があったのかと回想します。
楽しいおもちゃを与えて「遊ぶな!」というのは酷な話です。古い価値観から現代の価値観を批判するのも理不尽です。どちらもその時代ではメインストリームの考え方なのですから。時間差で価値観が変わっただけです。でもそこに衝突があります。しかし、数十年前の価値観が違う時代の話を持ち出して、しかも未成年で判断力も低い時の行為を責めて東京オリンピックの関係者を罷免するのはやりすぎだと思います。
デジタルタトゥーと言われるような過去の過ちは誰にでもあるんもんです。誰もが完全な人間ではありえません。おそらく大多数は不完全な過ちを犯す存在です。しかも、価値観が変わってから責任追及するのは過酷な「あとだしじゃんけん」です。これが比較的、容易にできるのがSNS社会です。
よく考えると、Windows95あたりが拡大の原点とすると、まだ30年です。40-50年くらい前にはデジタルタトゥーはありませんでしたので、30年前に比べると今は地獄なのかもしれません。
また、きわめて浅い思慮による事案も増えているように感じます。おそらくそのような事案は過去にも数多くあったのですが、報道やSNSに載るようなことがことはなかったので、身近や近所の界隈でしか広まらなかったものが全世界に公開可能となり増加したように感じるだけかと思います。
地獄の罠に絡めとられずに一生を終えたいなと思うオジーさんです。
世界はなぜ地獄になるのか (小学館新書) 新書 – 2023/8/1
説明
社会正義はめんどくさい。
人種や性別、性的指向などによらず、誰もが「自分らしく」生きられる社会は素晴らしい。だが、光が強ければ強いほど、影もまた濃くなる。「誰もが自分らしく生きられる社会」の実現を目指す「社会正義(ソーシャルジャスティス)」の運動は、キャンセルカルチャーという異形のものへと変貌していき、今日もSNSでは終わりのない罵詈雑言の応酬が続いている──。わたしたちは天国(ユートピア)と地獄(ディストピア)が一体となったこの「ユーディストピア」をどう生き延びればよいのか。ベストセラー作家の書き下ろし最新作。
橘 玲
2002年、国際金融小説『マネーロンダリング』でデビュー。同年、「新世紀の資本論」と評された『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』が30万部を超えるベストセラーに。06年『永遠の旅行者』が第19回山本周五郎賞候補。『言ってはいけない 残酷すぎる真実』で2017新書大賞受賞。