世界「失敗」製品図鑑

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荒木 博行 

世界「失敗」製品図鑑 「攻めた失敗」20例でわかる成功への近道 単行本 – 2021/10/14

 他人の失敗というのは面白いものである。この本はその他人の失敗を集めて楽しみ、未来への指針にしようという本です。そういうと高尚な本のようでもありますが、名だたる大企業が失敗することの楽しさ、失敗してもそれだけで終わらない強さなどが感じられる本です。
 個人的にも長く生きてるので「あーこれそうね、失敗ね」と思われる事例がいくつも出てきます。まずアマゾンのfirephone。これは私が本気で買おうと思っていたスマートフォンではあります。でも検討しているうちに評判が悪くなり、販売が終了しました。アマゾンの決断が早かった。同じくMicrosoftのWindowsPhone。こちらも本気で買う気がありました。こちらも検討しているうちにWindowsPhoneの周りが固められてアンドロイドから疎外されていったので買うタイミングを逃しました。こちらは決断は早くなく、PCのOSの覇者だから何時かはすごいことになると私は思っていましたが、なりませんでした。私の見る目のレベルもわかりますね。
 ゲーム機でもそうですね。私が子供の時にはゲーム機というのはありませんでしたので、そうは言っても20代の大人になってからの話です。新世代ゲーム機としてセガ/ドリームキャスト、パナ/3DO、SONY/プレイステーションの3種類が同時期に発売されて、しのぎを削っていましたが、最終的にはSONYのPlayStation以外は淘汰されました。そのソニーもAIBOで予想外の大きな成功をおさめたに関わらず、のちに事業の拡大に失敗し、AIBO事業終了に追い込まれています。
 意外だったのはナイキのゴルフ用具の事業です。どちらかというと技術革新のハードルが低い分野と思いますので、ナイキのブランド力があれば成功するのではないかと思っていましたが、世の中分からないものですね。
 直近の話題で一番印象に残っているのはセブンペイですね。どのコンビニも「なんとかpay」と言う名前を付けてバーコード決済に参入するという時代背景に、コンビニの覇者であるセブンイレブンは余裕をもって最後発に参入したように思えました。実際には当初からシステム問題が起きたり、不正利用や初歩的なセキュリティ意識の低さによってあっという間に終了した事業でした。一言で言えばセブンイレブンらしくない結果でした。私の中の印象ではセブンイレブンとはトヨタ自動車みたいにソツのない会社さと思っていました。大成功もないけど大失敗もない常にポイントを着実にゲットして行く会社だと思っていました。
 人間は失敗する生き物です。その失敗というのも、その時代環境で失敗と判断されたり成功と判断されたり、はっきり言うと曖昧な基準です。もしかすると50年後にはここに出ていた事例も最高の成功のルーツだったと言われるかもしれない。古い言い方かもしれませんが「不確実性に時代」です。
 内容が深刻じゃないのが救いですね。そりゃ、単なる金儲けの話ですからあんまり深刻に考える必要もないでしょう。読んで楽しかった。

世界「失敗」製品図鑑 「攻めた失敗」20例でわかる成功への近道 単行本 – 2021/10/14

説明
■すごい会社も派手に「失敗」していた!
アップル、グーグル、アマゾン、任天堂、ソニー、トヨタ、etc……グローバル企業20社の「失敗」事例をイラストと共に徹底解説。ベストセラー『世界「倒産」図鑑』の著者が贈る、トップ企業の「失敗」をあなたの「成功」に変えるケーススタディ集。

■『世界失敗製品図鑑』20事例のラインナップ
Case01 アマゾン/ファイアフォン 自社が描いた将来像を重視しすぎて失敗
Case02 フォード/エドセル 社内的な正しさを追求して失敗
Case03 コカ・コーラ/ニュー・コーク 適切なコミュニケーションができず失敗
Case04 フェイスブック/フェイスブック ホーム 無理なチャレンジを仕掛けて失敗
Case05 グーグル/グーグルプラス 企業側の戦略を優先して失敗
Case06 ファーストリテイリング/スキップ 「プロダクトのレンズ」を外せず失敗
Case07 マイクロソフト/ウィンドウズフォン 初期段階の出遅れを挽回できず失敗
Case08 任天堂/Wii U 理想を追求しすぎて仲間を作れず失敗
Case09 NTTドコモ/NOTTV 成功体験にとらわれて失敗
Case10 ナイキ/ゴルフ用具事業 強みを活かせない隣接市場に参入して失敗
Case11 東芝/HD DVD 最初のシナリオを修正できず失敗
Case12 セガ・エンタープライゼス/ドリームキャスト
Case13 セブン-イレブン・ジャパン/セブンペイ 「自社だけが特別」思考に陥って失敗
Case14 ソニー/AIBO 経営陣の事業尺度に合わず失敗
Case15 ネットフリックス/クイックスター 反対意見が言いにくい空気に気づけず失敗
Case16 サムスングループ/サムスン自動車 経済危機に見舞われて失敗
Case17 ゼネラル・エレクトリック/プレディックス 顧客の準備が整わず悪循環に突入して失敗
Case18 アップル/ニュートン 主要事業の不調で無理な勝負を迫られ失敗
Case19 モトローラ/イリジウム 「課題の賞味期限」が見極め困難に陥って失敗
Case20 トヨタ自動車/パブリカ 高度経済成長期のスピードについていけず失敗

荒木博行(あらき・ひろゆき)
株式会社学びデザイン代表取締役社長 住友商事、グロービス(経営大学院副研究科長)を経て、株式会社学びデザインを設立。フライヤーやNewsPicks、NOKIOOなどスタートアップ企業のアドバイザーとして関わるほか、絵本ナビの社外監査役、武蔵野大学で教員なども務める。著書に『藁を手に旅に出よう』(文藝春秋)、『見るだけでわかる! ビジネス書図鑑』シリーズ(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『世界「倒産」図鑑』『世界「失敗」製品図鑑』(日経BP)など著書多数。

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